パワハラ証拠となる日記の書き方を解説!

パワハラ
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パワハラの証拠としては、録音データや動画、メールなど様々なものが使われますが、日記やメモを証拠としたいと考える方もいるかと思います。果たしてパワハラの証拠として日記やメモは有効なのでしょうか。

この記事では、日記やメモがパワハラの証拠として使えるのか、証拠となるためにはどのような書き方が必要なのか注意点やポイントをお伝えします。

日記やメモはパワハラの証拠として有効?

自分で書いた日記やメモも、パワハラの証拠として価値があります。ただし、日記やメモはその特性によって、録音や録画などと比べると、どこまで「客観的な証拠」と判断されるか難しい部分があるのも事実です。

【日記やメモの特性】

日記やメモには、以下のような特性があるため、録音や録画よりも信頼性が低いとみなされがちです。

  • 事実と異なる内容を記載できる
  • 実際の言動よりも抽象的な記述になりやすい
  • パワハラを受けてから記録まで時間が空くほど記憶が曖昧になる
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法的な証拠として認めてもらうには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。次の章で日記やメモを証拠として残す時のポイントや注意点を解説するので、ぜひ目を通しておいてください。

日記やメモを証拠として残す時のポイント・注意点

パワハラの証拠として日記やメモを残す場合のポイントや注意点は、次の6つです。

  • ポイント1.日時や場所、相手の発言など明確に残しておく
  • ポイント2.できるだけ多くの記録を残しておく
  • ポイント3.記憶が新しいうちに記録しておく
  • ポイント4.自分がどのような精神的苦痛を感じたかを記録する
  • ポイント5.業務にどのような支障が出たか記載しておく
  • ポイント6.常に手帳やメモを持ち歩く

このポイントを踏まえた上で日記やメモを記入し、有力な証拠を残しましょう。

日時や場所、相手の発言など明確に残しておく

日記やメモ書きなどが証拠として有効なのは、被害者の感じたことをタイムリーに綴った資料であるというところが大きいと言えます。

記録する時には、必ず「いつ」「どこで」「誰に」「どのようなことをされたのか」という点を、明確にしておいてください。

「◯◯の件で、◯◯上司にひどいことを言われた」といった内容では、証拠として不十分です。できるだけ具体的な言動を思い出して、やり取りを再現しておくようにしましょう。

できるだけ多くの記録を残しておく

日記やメモ書きを証拠とする場合は、日数やボリュームは多ければ多いほど有力な証拠となります。

特に日数やボリュームに決まりはありませんが、少しでもパワハラ行為を受けた場合は、その都度詳細に記録しておきましょう。

記録する時は、鉛筆ではなくボールペンを使用します。なぜボールペンが良いのかというと、鉛筆だと書き直しができてしまうため、証拠としての効力が弱くなってしまうためです。

もしパワハラを目撃した人がいれば、ノートに目撃した旨を記入してもらい、署名をもらっておくと重要な証拠となります。

記憶が新しいうちに記録しておく

より詳細に事実を記録できるよう、パワハラを受けたらできるだけ早く日記やメモを書くようにしましょう。

加害者から言われた言葉や態度、周囲の状況など、鮮明に詳細を覚えている段階で記録することによって、よりリアルな証拠を残すことが可能です。

自分がどのような精神的苦痛を感じたかを記録する

日記で証拠を残す際は、パワハラを受けたことで自分がどのような精神的苦痛を感じたかを記録することも大切なポイントです。

録音や録画など他の方法では伝え切れない、被害者のリアルタイムな心境を詳細に伝えられるのも、日記をパワハラの証拠として使うメリットだと言えます。

業務にどのような支障が出たかも記載する

厚生労働省では、職場におけるパワーハラスメントについて、以下の3つの要素を全て満たすものだと定義しています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動である
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

パワハラの定義の一つとして「労働者の就業環境が害される」ということが規定されていることから、パワハラを受けたことで業務にどのような支障が起こったかも明記しておくことで、パワハラの証拠としてより強固なものとなることが予想されます。

常に手帳やメモを持ち歩く

パワハラを受けてすぐに記録できるよう、常に手帳やメモを持ち歩くのがおすすめです。さっと取り出せるよう、ポケットサイズのものを選ぶと邪魔にならずに携帯できます。

証拠として残すノート類は、ページ数が印刷されているようなかっちりしたものを使うのがベスト。被害者本人の手書きで、なおかつ改ざんがされにくいものであれば、本人がその日のうちに記録したものだと推測できるため、証明力が高くなります。

証拠を日記で記録するなら手書きorデータ?

パワハラの証拠として日記を使用する場合は、手書きで行うのがベターです。手書きであれば、後でまとめて捏造したという疑念を招かずに済みます

コンパクトサイズの手帳やメモ帳にパワハラがあった直後に記入し、帰宅してから日記帳やノートなどに記録し直しても良いでしょう。この場合、パワハラがあったらその都度簡単に手書きでメモを残し、帰宅してからパソコンを使ってデータを作成することもできます。

メモ書きをスマホなどで撮影し、自分宛にメールやLINEを送っておけば、その日付のデータから、パワハラを受けた直後に記録したことを示せるため、よりいっそう証明力が高まります

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最終的に日記帳やノートにまとめる場合も、手書きのメモ書きは大切な証拠となりますので、捨てずに保管しておいてください。

日記やメモを証拠とした解決事例

日記やメモのおかげで優位にパワハラの対応が進んだ裁判や、twitterの事例をご紹介します。

「死んでしまえばいい」「毎日同じことを言う身にもなれ」。パワハラ認定の決め手は、自殺した男性が手帳に記したメモだった――。福井地裁は11月末、上司の「典型的なパワハラ」によって、会社員の男性(当時19歳)が自殺に追い込まれたとして、会社と直属の上司に約7200万円の損害賠償を命じた。

引用:岩城弁護士のはばかり日記
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上記の裁判事例では、上司から言われた言葉がびっしりと書き込まれた手帳が有力な証拠となりました。手帳には、「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」といった発言が記載されており、23カ所がパワハラの根拠となったそうです。

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こちらの事案は、被害者女性が付けていた日記がハラスメントの根拠となり勝訴しました。パワハラの言動を、その都度明記しておくことで、日記やメモも有力な証拠となります。

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録音や録画が難しくても、しっかりとメモ書きや日記を残すことでパワハラが行われていたことを認めてもらえるということが分かりますね。パワハラ被害に遭ったら泣き寝入りせずに、コツコツ証拠を集めましょう。

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2020年6月1日よりパワハラ防止法が施行(中小企業は2022年4月1日から)され、「方針の明確化、周知・啓発」「相談体制の整備」「パワハラ被害者への適切な対応」「再発防止」に対する適切な措置を行うことが義務付けられました。

このことから、会社側もパワハラの相談を受けたら部署移動を検討するなど、何かしらの対策を講じてくれる可能性があります。弁護士や労基署など外部に相談するのもよいですが、その前に一度社内の相談窓口や人事への相談も検討してみても良いでしょう。

日記やメモ以外に有効な証拠

日記やメモ以外にパワハラの証拠としておすすめなものには、次のようなものがあります。

  • ボイスレコーダーやスマホによる録音
  • パワハラ現場の録画
  • メールやLINEのやり取り
  • SNSの投稿
  • 医師の診断書

パワハラの言動を記録した録音や録画データは、きわめて有効な証拠となります。録音や録画は、パワハラが行われた場面をリアルに再現できますし、改変することが難しく、客観的な証拠として高い証明力を持ちます。

メールやLINEの文面は、パワハラ加害者から実際に送信された文章そのものであるということから、客観的な証拠として価値が高いと言えるでしょう。メールやLINEには日付が記載されているため、パワハラがどのような時系列でなされていたかを明らかにすることも可能です。

SNSの投稿も加害者本人の発言ですからパワハラの証拠として認められます。消されてしまう恐れもあるので、見つけたらスクリーンショットなどで残しておきましょう。

パワハラが原因でうつ病など心身に問題が生じた場合は、必ず医師の診断書を発行してもらってください。パワハラが原因でストレス性の病気にかかったことを証明できれば、裁判で有利になる可能性があります。

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日記やメモのほか、メールやLINEの文面、SNSの投稿、通院中の方は医師の診断書など、証拠があればあるだけパワハラの証明力は高まります。できるだけ多くの証拠を集めて、パワハラを明らかにしましょう!

パワハラよくある質問

最後に、パワハラに関する質問にお答えします。

パワハラで慰謝料を請求する場合、弁護士費用はいくらかかる?

弁護士費用は事務所によって様々ですが、約50~100万円です。費用は、着手金、報酬金のほか、相談料、裁判所までの交通費なども別途かかることもあります。

慰謝料の相場は、50~100万円と言われていますが、どの程度慰謝料をとれるのかは、パワハラの程度や、明確な証拠があるのかによっても変動するため一概には言えません。

慰謝料など損害賠償を請求する場合は、多くの費用がかかってしまいますし、万が一失敗したら解雇などのリスクもあります。労働審判か訴訟を起こすかなどの判断もあると思いますので、一度弁護士やその他相談窓口に問い合わせてから決断することをおすすめします。

パワハラでうつ病になった。労災認定される?

強度のパワハラを受けたり、強度とは言えなくてもパワハラが継続的に行われており、その後およそ6ヶ月以内にうつ病などの精神疾患を発症した場合、精神疾患の既往歴や、家族の死亡・離婚など、業務以外で精神疾患を発症させるような事情がない限りは、労災認定されると考えて良いでしょう。

精神障害の労災認定のための要件は次のとおりです。

  1. 認定基準の対象となる精神障害(※)を発病していること
  2. 精神障害の発症前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

(※)認定基準の対象となる精神障害とは、気分障害(うつ病、双極性障害)や神経症性障害ストレス関連障害(不安障害、パニック障害、気分変調症、社交不安障害など)および身体的表現性障害(痛みや吐き気・しびれなど)を指します。

参考:厚生労働省 | 精神障害の労災認定 PDF

パワハラの相談窓口はありますか?

パワハラ防止法が施行されたこともあり、社内にハラスメントに対する相談窓口を用意する企業が増えました。そのため、まずは社内の相談窓口を利用するのもおすすめです。社内の窓口に相談することで、パワハラ加害者を移動させてくれるなど、職場環境が改善される可能性があります。

しかし、中には社内の人にパワハラを知られたくないという方もいることでしょう。そういった場合は、信頼できる外部の窓口を利用するのがおすすめです。

  • 労働基準監督署の総合労働相談コーナー
  • 労働相談センター
  • 労働条件相談ほっとライン
  • みんなの人権110番全国共通人権相談ダイヤル
  • かいけつサポート
  • 法テラス(日本司法支援センター)
  • こころの耳
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上記は全て基本的に相談料はかからないので、安心して利用できます。こちらの記事の中で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてみてください。

パワハラ被害を勝手に録音しても大丈夫?

録音する行為は、一種の盗聴となりプライバシー侵害ともなり得ますが、自分の身を守るなど正当な目的のためであり、相当な範囲であれば、不法行為とはならないでしょう。

パワハラの証拠として録音データを収集する場合は、会話当事者の一方が相手方に同意を得ず録音する「秘密録音」が行われることがほとんどです。

東京高裁(昭和52年7月15日判決)の事案において、裁判所は、相手に無断で録音したデータの裁判での有効性について、次のように判断しました。

「その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されてもやむを得ないものというべきである」

「話者の同意なくしてなされた録音テープは、通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らかであるから、その証拠能力の適否の判定に当っては、その録音の手段方法が著しく反社会的と認められるか否かを基準とすべきものと解するのが相当である」

(東高判昭52.7.15判時867号60頁)

引用:たくみ弁護士事務所
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つまり、録音したデータが「著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって集められたものでない限り、証拠として利用できる」ということになります。

セクハラやモラハラの証拠はどのように集める?

セクハラやモラハラなどのハラスメント行為の証拠を集める時も、基本的にパワハラと同じような方法で収集します。

  • ボイスレコーダーやスマホによる録音
  • パワハラ現場の録画
  • 日記やメモ
  • メールやLINEのやり取り
  • SNSの投稿
  • 医師の診断書
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上記のようなものは、あらゆるハラスメントの証拠として有効です。パワハラだけでなく、セクハラやモラハラ、マタハラなどもできる限り多くの証拠を集めてハラスメントを実証しましょう。

ブラック会社を「今すぐに」辞めたい!どうしたらいい?

パワハラの横行するようなブラック企業に勤めていると、「今すぐにこの環境から逃げ出したい」という気持ちにもなりますよね。

そのような環境下で働いていると、簡単に退職を切り出すことが難しいことも多く、ずるずると居続ける人も少なくないでしょう。

パワハラ退職やブラック企業勤めの人が、即日で辞めるには退職代行の利用もおすすめです。退職代行業者は、困難なケースの退職も数多く経験しているので、最も安全で確実な方法で退職まで導いてくれます

会社との交渉が認められている労働組合や弁護士のサービスを使えば、未払いの残業代の請求や有給休暇についての交渉も可能です。

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退職代行で辞めれば、自分で退職手続きをする必要がないので、怖い上司に退職を申し出たり、出社して会社の人とやり取りせずに辞められます。このように精神的な負担を減らして辞められるのも退職代行を利用する大きなメリットだと言えますね。

日記やメモもパワハラの証拠としてしっかり残しておこう!

日記やメモもパワハラの証拠として有効です。過去にメモ書きがパワハラの根拠として損害賠償の請求が認められたケースもあります。

パワハラの証拠はできる限りたくさん集め、詳細に記録することが大切です。日頃からメモ帳などを持ち歩き、パワハラの言動があればすぐに書き留めるようにしましょう。

確実な証拠があれば、パワハラ行為が行われたことを実証できます。パワハラを解決するには、自分一人で抱え込むよりも、専門家に相談するのがおすすめです。

ぜひ日記やメモ書き、録音データなど証拠を持って、労働基準監督署や労働問題に強い弁護士に相談してみてください。

「今すぐにパワハラ会社を辞めたい」ということでしたら、退職代行の利用も選択肢の一つです。相談は無料というところが多いので、気になる方は一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。