「退職しよう」と思う時、退職届などの書類を提出してから会社を辞めるのが一般的です。しかし退職を申し出る書類には、「退職届・退職願・辞表」などいくつか種類があり、それぞれ意味合いや役割が異なるため、目的に合わせて選ぶ必要があります。
そこで今回は、これから退職を考えている方に向けて、退職届の書き方や、退職届と退職願、辞表の違い、退職届を出してから退職に至るまでの流れを解説します。

トラブルを避けて、円満な退職をするために大切なポイントをお伝えしますので、ぜひチェックしておいてください。
まずは退職届・退職願・辞表の違いを知っておこう

【それぞれの書類の違いをチェック!】
・退職届 → 退職が確定した後、退職の決定を「届け出る」書類。
一度提出すると撤回ができない。
・退職願 → 会社に退職を「願い出る」ための種類。
会社側が合意するまでは撤回できる。
・辞表→ 会社の社長や役員、公務員が職を辞する時に届け出る書類。
退職届は、会社に退職の可否を問わず、退職する旨を通告するための書類です。退職届には退職日を明記し、退職届が会社側に到達すれば、拒否された場合でも労働契約は終了します。
一方の退職願は、会社に退職の打診するための書類です。退職願には退職希望日を記載し、退職願が受理されると、会社が「退職の希望を受け入れた」ということになります。
辞表は、社長や取締役など会社側と雇用関係にない立場の人や、公務員が辞める場合に提出する書類です。役員が辞表を提出した後に、一般社員として勤務し続けることもあります。
退職届の渡し方、タイミング
「退職届はどのタイミングで提出したらいい?」「退職の申し出をした後、どれくらいの期間で辞められるの?」など、退職までの一般的な流れをご紹介します。
【退職が1ヶ月前までと規定されている企業のスケジュール例】
・退職の意思を直属の上司に伝える 1~2月(2ヶ月前くらい)
・退職届を提出する 1~2月(1ヶ月以上前)
・引き継ぎをする 2~3月(1ヶ月前~当日)
・退職日 3月31日

会社側との合意に基づき円満に退職をしたい場合、まず口頭で直属の上司にアポを取り、退職の承諾を得てから「退職届」を提出するのが一般的です。この時、退職日についても交渉しておくと手続きがスムーズに進みます。
退職届は出す前に準備や計画が必要
退職届を提出する時は、事前に準備や計画を立てておくようにしましょう。感情に流されて辞めてしまうと、後々後悔してしまうかもしれません。まずは「本当に退職したいのか」自分の気持ちを整理して、決心が固まってから退職届を提出してください。
その他に退職を申し出る前に「準備」しておきたいことについては、以下で詳しく記載していますので、これから退職を考えている人は、チェックしておいてください。
書き始める前に就業規則を確認しておこう
退職を決めたら、必ず就業規則を確認するようにしてください。
「退職する1ヶ月前までに申し出をする」「会社のテンプレートを使用する」など、企業ごとにルールは異なりますので、早めにチェックしておくことをおすすめします。

就業規則を確認して、退職の準備や計画を立てたら、退職届を作成していきましょう。
退職の準備・退職届の作成
退職届の作成時に用意するものは、以下の通りです。間違いがないように、丁寧に書くようにしてくださいね。
【用意するもの】
1.「便箋」はA4かB5の無地で白いもの。罫線があるものも可。
2.「封筒」は便箋のサイズに合わせる。
(A4の便箋→長形3号、B5の便箋→長形4号)
3.「筆記用具」は黒ボールペンか万年筆。油性・水性どちらでもOK
退職届を作成する時は、白色の便箋、白色無地の封筒を使用しましょう。そして、筆記用具は黒ボールペンか万年筆など黒色を使います。
封筒は使用する便箋のサイズに合う大きさを用意してください。
退職届の書き方(テンプレート・具体例)
会社指定の書式名がない場合の「退職届」の一般的な書き方は、以下のとおりです。
【見本(縦書きの場合)】

- 冒頭に「退職届」or「退職願」と書きます。
- 行末に「私儀」or「私事」と書きます。
- 退職届の場合は「退職いたします」で締め、退職願の場合は「お願い申し上げます」で締めましょう。
- 「退職届」「退職願」ともに「提出」する日付を記載します。
- 自分の所属部署を記入。
- 氏名を記入したら最後に捺印します。
- 宛名として会社の正式名称を記載してください。
- 代表者の氏名・役職名を書きます。敬称は「殿」か「様」です。
【見本(横書きの場合)】

- 冒頭に「退職届」or「退職願」と書きます。
- 退職届、退職願ともに「提出」する日付を記入。
- 宛名として会社の正式名称を書きます。
- 代表者の氏名・役職名を書きます。敬称は「殿」か「様」です。
- 自分の所属部署を記入してください。
- 氏名を記入し、氏名の最後に捺印します。
- 「私儀」or「私事」と書きます。
- 退職届の場合は「退職いたします」で締め、退職願の場合は「お願い申し上げます」で締めましょう。

退職届や退職願は、重要な文書なので、修正ペンは使わないようにしましょう。書き損じてしまった場合は、新しい用紙に書き直すのが無難です。
もし、会社指定の用紙を使用していて、替えがない場合は2重線を引き訂正印を押します。
封筒の書き方や入れ方
- 封筒の中央に「退職届」or「退職願」と書きます。
- 封筒の裏の左下に所属部署名と自分の氏名を書きます。
- 退職届や退職願は、三つ折りにして封筒に入れます。手渡しする場合は、封をしなくても構いません。
退職届・退職願を3つ折りにする手順は、以下の通りです。
- 机の上にまっすぐ便箋を置きます。
- 便箋の下3分の1を上へ折り返えしてください。
- 上3分の1を折り返します。
- 封筒に入れる時は、右上の書き出しが裏側の右上に来るようにしましょう。
退職届・退職願は手書き or PCどちらが正解?
そもそも法律上では、退職届や退職願の提出義務はありません。あくまで退職の意思を書類で伝えて、その後のトラブルを防ぐことを目的とされています。
退職届を作成する前に就業規則を確認し、会社から指定されたフォーマットやテンプレートなどがあれば、それに従いましょう。
念のために人事担当者に、退職届は手書きとパソコンどちらが良いか確認しておいても良いですね。

パソコンで退職届や退職願を作成する場合でも、最後の署名は手書きで書くようにしてください。署名を手書きにすることで、筆跡からあなたが書いた文書であると証明できます。
退職届の渡し方ポイント

退職の申し出をする際は、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
- 会社を辞める意思が固まってから伝える
- 退職届を提出する前に直属の上司にアポを取る
- 余裕を持って退職の意思を伝える
- 会社への不満は伝えない
この4つのポイントを押さえて、円満に受け入れてもらえるようになります。
退職の意思が固まってから伝える
退職届を提出するのは、辞める意思が固まってからにしましょう。意思が固まっていないと、少し引き止められただけで気持ちが揺らいでしまいます。
当然仕事を辞めるのを踏みとどまるのは悪いことではありませんが、一度退職の話を出してから引っ込めたとなると、人間関係がギクシャクしてしてしまったり、社内での評価が下がってしまうこともあるので注意が必要です。

意思が固まっていない状態で辞めてしまうと、「早まるんじゃなかった」と、後で後悔する可能性も。退職届を出す前に、自分自身のキャリアプランや仕事観も見つめ直すことをおすすめします。
退職届を提出する前に直属の上司にアポを取る
退職届を出す前に、直属の上司にアポを取っておきましょう。直属の上司を飛び越えて、その上の立場の人や、同僚・先輩など他の人に伝えてしまうのはマナー違反です。
相談する順番を間違えてしまうと、「直属の上司にマネジメント能力がないのでは?」と、上司の管理職としての立場が問われてしまいますし、上司が機嫌を損ねてトラブルに発展する可能性も否めません。
まずは「今後のことでお話があるのですが、少しお時間をいただけないでしょうか」と、直属の上司に口頭でアポを取り、退職の時期などについても相談しておいてください。

トラブルなく円満に退職するために、順序を守って退職の意思を伝えることが大切です。
またタイミングを考えることも重要なポイントだと言えます。職種などによって時期は異なりますが、人手不足になりがちな繁忙期は避けておきましょう。
余裕を持って退職の意思を伝える
退職の意思が固まったら、退職の意思を伝えます。民法上は、退職の申し出をして2週間が経過すれば労働契約は終了すると定められていますが、会社への申し出は、退職する1~2ヶ月の余裕を持って行うのがおすすめ。
会社の就業規則で退職の申し出は「1ヶ月以上前までに」と定められているところも多いですし、引継ぎや会社や同僚への負担、挨拶などを考えると、少なくとも1ヶ月前には伝えておきたいところです。

法律上は問題がなかったとしても、会社のルールを守らないと「就業規則を守っていない!社会人としておかしい」など、会社の人達から反感をかってしまいます。円満に退職するためにも余裕を持って退職届を提出しましょう。
会社への不満は伝えない
会社を辞める理由は人によって様々なですが、給与面の不満など会社側に対するネガティブなものが理由である場合も、それをストレートに伝えるのはおすすめできません。
ネガティブな退職理由の場合、「不満要素を改善するから、もう少し頑張らないか」と引き止めの理由を作ってしまいますし、会社の人とギクシャクしてしまう可能性もあります。
退職理由は、以下のような「前向きかつ個人的なもの」にしておきましょう。
- キャリアアップのため、より挑戦的な環境に身をおきたい
- 転職して新たな分野にチャレンジしたい
予め周囲の人が納得できるような理由を考えておくと、スムーズに伝えられます。

現職では実現できないことを理由に、固い意思を持って表明してください。しっかりとした理由があることが伝われば、上司や会社側も納得せざるを得なくなるでしょう。
退職を拒否された場合は、郵送する選択肢も
退職時は、なるべく会社のルールに従って手続きを進めるのがベストですが、ブラック企業などで働いていると、在職強要されることも珍しくありません。
退職を拒否されたり、取り合ってもらえないような場合は、退職届を郵送して辞めることも可能です。法律上は、「書面で退職の申し込みをすること」と規定されている訳ではないので、本来は口頭やメールなどでも問題はないことになります。

口頭だけで退職の意向を伝えても、証拠が残らないため後々トラブルに発展することも考えられます。そういったトラブルを避けるためにも、退職届は必ず提出するようにして、きちんと退職の意思表示をしたという証拠を残しておきましょう。
退職届を郵送する際は、内容証明を利用するのがおすすめです。内容証明とは、「いつ、誰が誰宛てに、どのような内容の文書を送ったのか」を公的に証明できる郵便物のこと。
内容証明を利用すると、「会社に退職の意思を伝えた」という事実を公に認めてもらうことができます。
退職届よくある質問

最後に退職届に関するよくある質問にお答えします。
取下げはできる?
退職願は退職を打診する書類なので、撤回することも可能です。一方の退職届は、退職の決定を届け出るものなので、原則取下げはできません。
退職願は取り下げもできますが、退職の打診を一度でもしてしまうと、上司や同僚などからの見られ方や評価に悪影響がある可能性があります。

退職願・退職届いずれの場合も、必ず退職の意思を固めてから提出するようにしましょう。
提出した後にボーナスはもらえますか?
一般的に「ボーナス(賞与)」には、法律による定めがありません。企業ごとに、就業規則や労働契約などの取り決めがあるので、そちらに従ってボーナスは支給されます。

退職届を提出していても、ボーナス支給日に在籍していれば、ボーナスが支払われる可能性は高いでしょう。すでに有給休暇を消化中であっても、会社に籍が残っている限りは支給対象となるのが一般的です。
厚生労働省の「モデル就業規則」には、ボーナス(賞与)に関する事項が挙げられており、算定対象の期間に応じてボーナスが支給される仕組みなどが示されています。
【第48条 賞与】
1 賞与は、労基法その他の法律によって設けることが義務付けられているものではあり ません。しかし、賞与を支給する場合、就業規則に支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法等を明確にしておくことが必要です。
2 就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞 与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に 在職しない者には支給しないこととすることも可能です。
(引用:厚生労働省 | モデル就業規則)

労働契約において、支給日在籍条項が定められている場合、ボーナス支給日に在籍していない(退職している)従業員に対する支払い義務は生じません。
受け取ってもらない時はどうしたらいいですか?
退職届を受け取ってもらえなくても、退職することは可能です。民法では、「雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定められています。
もし上司が退職届を受け取ってくれなかった場合は、以下の手段を取ることができます。
【退職届を受け取ってもらえない時の手段】
- 上司のさらに上司に相談する
- 内容証明郵便で退職届を会社に送る
- 労働基準監督署に相談する
- 退職代行サービスを利用する

「今すぐにでも退職したい」「パワハラ上司に退職の申し出ができない」ということでしたら、退職代行への依頼がおすすめです。全ての退職手続きを退職代行業者に代わってもらえるので、即日退職も可能ですし、精神的な負担を軽減できます。
会社都合退職でも提出するべき?
【会社都合退職となるケース】
・倒産やリストラにより労働契約が解除となる
・会社が早期退職を募集して、それに応募し退職が決まった
・退職勧奨による退職
・給料の大幅な減少もしくは未払い
・上司や同僚によるパワハラやセクハラなどの嫌がらせ行為による退職
上記のような会社都合退職をする場合、会社の都合で辞めることになるので、退職届や退職願を出す必要はありません。しかし、悪質な企業の場合、労働者に退職届や退職願の提出を求め、自己都合退職扱いしてしまうこともあります。

自己都合退職になってしまうと、失業保険の支払い条件などで不利になってしまいますので、退職届などの書類の提出を求められても、きちんと断ることが大切です。
良識のある企業であっても、手続き上退職届や退職願の提出を必要とすることもあります。
そういった場合でも、退職理由を「一身上の都合により」とするのではなく、「貴社、退職勧奨に伴い」や「給与の未払いが続いたため、退職致します」など、会社都合であることが分かる文面にしておいてください。
会社都合で辞めた場合、退職理由はどうなる?
会社都合で辞めた場合、履歴書や職務経歴書、面接の際答える退職理由は「会社都合」となります。
自己都合で辞めたにも関わらず、「会社都合により退職」としたり、逆にリストラで退職したのに「一身上の都合により退職」とするのは、経歴詐称にあたるので注意が必要です。
まとめ

今回は、退職届・退職願・辞表の違いや、退職届の書き方、退職までの流れについて解説してきました。
退職の申し出をする書類は、それぞれ意味合いや役割が異なるので、しっかり理解した上で目的に合わせて使い分けるようにしましょう。
退職届の書き方や出し方などは、ポイントを押さえておけば決して難しいことはありません。ぜひ、記事の内容を参考にして円満退職に繋げてください。